ボラン

ボラン(trihydridoboron)はボリンとも呼ばれ、化学式BH3で表される無機化合物である。 ボランはすべて反磁性で電子不足の化合物である。 ボランはボラン-ルイス塩基錯体として利用でき、例えば、ボラン-THF、ボラン-ジメチルアミン、ボラン-ジメチルサルファイド、ボラン-ピリジン、ボラン-ジフェニルホスフィン等がある。 ボランは二量化する傾向があり、3中心-2電子結合で結合する橋渡し水素を含むジボランを形成する。 ボランは、ロケット燃料や自動車用燃料として広く研究されている。 また、配位化合物の配位子として働く。 有機合成では、アルケンを横切るBH3のトリアルキルボランへの付加を特徴とするヒドロボレーションに広く用いられている(Brown, H. C., et al., The boron approach to asymmertric synthesis, Pure & Appl. 1991, 63 (3), 307316). ヒドロホウ素化反応は、特に立体特異的な有機合成の分野で重要である。 カルボン酸のアルコールへの直接還元、アミドのアミンへの還元、反応性の低いアルキンの分子間ヒドロアミノ化、鈴木カップリング、その他多くの反応がボランとその誘導体で効率的に行える。 有機ボラン化合物のホウ素-炭素結合は酸化されると開裂し、炭素原子の配置を保ったまま立体特異的にホウ素原子に置き換わる。 ジイソピノカンファイルボランやオキサザボロリジン(コーリーバクシ-柴田還元)などのキラル有機ボランは、不斉合成に多大な応用が期待されている。 また、有機ホウ素はオレフィン系化合物の重合触媒としても有用である。 また、ブロック剤との複合化により安定化することができるため、表面エネルギーの低いオレフィン類に良好な接着性を示すことができる。 ボランは、ポジトロン断層法(PET)や磁気共鳴画像法(MRI)などの最新の医療用画像処理技術に応用することができる。

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